「うちの子、算数だけ本当に苦手で……」——小学生の保護者から、これは本当によく聞く悩みです。国語や社会はそこそこなのに、算数になると途端に手が止まる。テストを見ると平均点を大きく下回っていて、本人も「どうせできない」と諦めモードに入っている。
私は大学の4年間、塾講師と家庭教師として子どもたちに勉強を教えてきました。その中で、算数が極端に苦手だった小学生を、周囲から「優秀な子」と言われるまで伸ばした経験があります。この記事では、そのとき実際に使った教え方を、できるだけ具体的に紹介します。特別な才能の話ではなく、家庭でも真似できる考え方です。
算数が苦手な子は「頭が悪い」わけではない
最初にはっきり言っておきたいのは、算数が苦手な子の多くは、頭が悪いのではなく「難しそう」で思考を放棄しているだけ、ということです。
私が担当していた小学生の子は、算数のテストがいつも30点ほどでした。でも漢字はとても得意で、記憶力や理解力そのものが低いわけではなかったんです。ではなぜ算数だけできないのか。観察していてわかったのは、問題を見た瞬間に「これは無理だ」と感じて、考える前に手を止めてしまうことでした。
つまり、算数ができないのではなく、算数に向き合う前に心が折れている。ここを解きほぐさないと、いくら問題を解かせても伸びません。
鍵は「問題の要素分解」——難しい問題を階段にする
そこで私が使ったのが、難しい問題を小さな要素に分解して、いきなり本題にぶつからせない教え方です。
たとえば、速さの文章問題。
Aさんは家から学校まで1200mの道のりを15分で歩きました。Aさんの速さを求めなさい。
この問題を、算数が苦手な子にそのまま出すとどうなるか。まず文章が長い。「道のり」「速さ」といった言葉が出てくる。それだけで「難しそう」と感じて、思考を放棄してしまうんです。文章を読む段階でもう脱落している。
そこで私は、同じ問題を2段階に分けて出しました。
問1:速さ・道のり・時間の関係(公式)を書きなさい。 問2:Aさんは家から学校まで1200mを15分で歩きました。Aさんの速さを求めなさい。
問1で「速さ = 道のり ÷ 時間」という土台を自分の手で書かせておく。すると問2に来たとき、子どもは「あ、さっき書いた公式に当てはめればいいんだ」と気づけます。本来なら難しく見えた問題が、自分で上れる階段に変わるわけです。
これが「要素分解」の考え方です。大人が見れば一瞬の問題でも、苦手な子にとっては複数の壁が重なっている。その壁を1枚ずつに分けてあげるだけで、驚くほどスムーズに解けるようになります。
まず「成功体験」を脳に刷り込む
要素分解と並行して私が徹底したのが、成功体験を積ませることでした。
具体的には、週1回の自作テストの難易度をぐっと下げ、その子がほぼ100点を取れるように設計しました。簡単すぎると意味がないのでは、と思うかもしれません。でも狙いは点数ではなく、「勉強すれば成果が出る」という感覚を脳に刷り込むことにあります。
算数が苦手な子ほど、「やってもできない」という失敗体験を積み重ねてしまっています。この負のループを断ち切るには、まず「できた!」という感覚を取り戻させることが先決なんです。土台となる自信ができてから、少しずつ難易度を上げていきます。
「1教科を尖らせる」と、他の教科も連鎖して伸びる
自信がついてきたら、次は得意教科を1つ作る段階に入ります。
私が担当した子は、点数は低いものの戦国武将に強い興味を持っていました。そこで、算数と並行して社会を集中的にやったんです。好きな分野だから吸収も早く、次のテストでいきなり90点を取りました。
ここで面白いことが起きます。1教科で「やればできる」を経験すると、その成功体験が他の教科にも波及するんです。「社会でできたんだから、算数もやればできるかも」と、子ども自身の中で自己評価が書き換わる。結果、その子は最終的に全教科の成績が上がり、周りから「優秀な子」と言われるようになったと、保護者の方から聞きました。
苦手教科を直接叩くより、まず好きな1教科を突き抜けさせる。遠回りに見えて、これが一番効く道でした。
家庭でできる「要素分解」の第一歩
ここまでの方法を、家庭で実践するときのポイントをまとめます。
- 難しい問題を、そのまま解かせない。まず「この問題を解くには何が必要か」を一緒に書き出す。
- 公式や前提を先に確認する問いを、自分でワンステップ挟む。いきなり本題に行かない。
- 簡単な問題でいいので「できた」を毎回作る。点数より成功体験を優先する。
- 好きな教科・好きな単元をとことん伸ばす。1つの自信が全体を引き上げる。
大切なのは、親が「なんでこんな問題もできないの」と言わないこと。できないのではなく、壁が重なって見えているだけです。その壁を一緒に1枚ずつ外してあげれば、子どもは自分の力で上っていけます。
つまずきの原因を見つける:算数が苦手な子に多い3つのパターン
算数が苦手といっても、原因は子どもによって違います。原因を取り違えると、問題集をいくら増やしても効果が出ません。まずは「どこでつまずいているのか」を切り分けるところから始めてください。
- 計算が遅い・不正確:九九や繰り上がり・繰り下がりが定着しておらず、文章題に入る前に計算で力を使い切っている
- 算数の言葉があいまい:「道のり」「割合」「倍」など、算数特有の言葉の意味が曖昧なまま進んでしまっている
- 図や式にできない:文章は読めるのに、場面を図にして式に直す段階で止まってしまう
見分け方は簡単です。計算だけのプリントを解かせてみて、ミスや時間が目立つなら原因は計算です。計算は問題ないのに文章題だけ落とすなら、言葉の理解か、図・式にする力が原因と考えられます。
計算が原因のとき:基礎を「短く・毎日」やり直す
学年をさかのぼって復習するのは、恥ずかしいことではありません。算数は積み上げの教科なので、土台の穴は上の単元で必ず響いてきます。穴を放置したまま新しい単元に進んでも、苦手意識が増えるだけです。
ポイントは量より頻度です。1日5〜10分、簡単な計算を毎日続ける方が、週末にまとめて長時間やるより定着しやすくなります。難易度は「ほぼ全問正解できる」ところから始め、できた感覚を保ったまま少しずつ上げていきます。
文章題が原因のとき:図を描く習慣をつける
文章題が苦手な子の多くは、頭の中だけで状況を整理しようとして破綻します。線分図や簡単な絵に描き出すと、何が分かっていて何を求めればいいのかが見えてきます。
最初は大人が描いて見せ、次に一緒に描き、最後に自分で描かせる、という順に少しずつ手を離していきます。図が雑でも構いません。「とりあえず描いてみる」ことが、考えるのをやめないための入口になります。
やってはいけない関わり方
- 答えをすぐ教える:考える機会を奪い、「困ったら誰かが教えてくれる」と学んでしまう
- 間違いを指摘するだけで終わる:「どこまで分かっていて、どこで止まったか」を聞く方がずっと建設的
- 他の子や兄弟と比べる:自信をさらに削り、「どうせできない」を強めてしまう
- 長時間やらせる:集中が切れた状態の学習は、苦手意識だけを残す
よくある質問
算数が苦手なのは、才能の問題ですか?
「才能がないから」と決めつける根拠はありません。苦手の多くは、どこかの単元で理解が抜けたまま先へ進んでしまったことが原因です。抜けている場所を見つけて埋めれば、追いつける可能性は十分あります。
中学受験をしない場合、どこまで頑張らせるべきですか?
中学以降の数学や理科の土台になる、分数・割合・速さなどは優先して固めておく価値があります。一方で、受験向けの難しい特殊算まで追いかける必要はありません。「中学でつまずかない土台を作る」ことを基準に考えるのがおすすめです。
学習のやり方そのものに悩んでいる場合は、成績が伸びる家庭・伸びない家庭の差や勉強しない子への関わり方もあわせて読んでみてください。
それでも家庭だけでは難しいと感じたら
とはいえ、こうした要素分解や声かけを、家庭で親が続けるのはなかなか大変です。感情的になってしまったり、教え方に迷ったりするのは当然のこと。そういうときは、プロの手を借りるのも有力な選択肢です。
苦手教科の立て直しは、その子専用の階段を作れる個別指導や家庭教師が向いています。家庭教師のガンバは「勉強のやり方から教える」ことを掲げていて、予習復習のスケジュール管理などのサポートも充実しています。「今日は何をやればいいか」が具体的に決まっていることは、この記事で書いた「小さな成功体験を積ませる」という考え方と相性がいい仕組みです。
無料体験があるので、まずはお子さんとの相性を見てみるところから始めてもいいと思います。
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